MUE点
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現代における恥とは
2000/06/04(日) 01:59 What's Fool? | コンピュータ
ある朝‥といっても11時過ぎなので昼近く。いつもの通勤電車で座っていると、隣に一人着席した。ジーパン姿で、一見すると男性か女性かわからなかったのだが、鏡を見ながら睫毛を直したりしていたので女性であることが判明。
電車で化粧、そんなことは日常よくある極々当たり前のことなので、特に気にもせずうとうとしはじめたら、その女性はおもむろに鞄からノートパソコンを取り出した。A4サイズでオールインワンタイプだから少々大きめのVAIOだ。電車の中でノートパソコンを使う姿も、今となってはそれ程珍しい光景ではないが、A4サイズを使うのはあまり見ないかもしれない。にしてもVAIOばっかり見掛けるのは売れている証拠か。たまにはRupoで拡大文字を入力しまくっているような人がいても良さそうだが‥電車でやるこっちゃないか。
よくあることといいながらも。隣でノートパソコンを開いて使われるというのは、その隣にいる者としては意外と厄介なものである。ジロジロ覗くのも悪い気がして、目のやり場に困ったりする。でもすんごく気になる。だから結局チラチラと見てみたりするのだが、隣の彼女はしばしトラックパッドを操作しながらウィンドウを開いたり閉じたりした後、Outlookを起動してメールを読みはじめた。こうなるとますます覗くわけにはいかない。「隣に人がいるのを承知で開いてるんだから、覗かれるほうが悪いんだ」と思う人もいるかと思うが、そこはそれ、それがオレなりのマナーとでもいいますか。
きれいごとはともかく、どうせ眠いんだし寝よう‥と再びうとうとしはじめた頃。突如夕立ちが降り窓に激しい雨があたっているような、バチバチという音が鳴り響きだした。さっきまでは晴れていたのに、なんだここは熱帯雨林地帯かと目をあけてみると、音の源は隣の彼女のキータイプ音であった。そりゃもうものすごい勢いで打ちまくっている。「電車でノートは珍しくない」とは先にも述べたが、人前でこれだけ激しくキーを打つ人は初めて見た。そのあまりの威勢の良さに、通常なら「うるさいなぁ」と煙たがる私も逆に感心。激しいタイプの内容は当然というか、さっき読んでいたメールの返事のようだった。
覗きたい気持ちを押え込み、且つ激しいキータイプ音を我慢しながら寝ようと試みる‥が、やっぱりそんな状況で眠れる筈もなく、仕方ないのでもう見た中吊り広告を読み直したりしていた。すると、隣の彼女は突如まわりの景色を見渡し、慌てだした。どうやら激しくキー入力することに夢中で‥もとい、メールの返事を書くのに夢中で、もうすぐ降車駅であることに気づかなかったようだ。電車は減速をはじめており、本当にもうすぐついてしまう。彼女は下書き保存もままならず蓋を閉めようとしたのだが、やっぱり保存してないままリジュームするのはどうかと思ったのか、蓋が閉まる寸でのところで止めていた。気持ちはわかるがそりゃ半端。案の定、その状態で他の荷物を持ち直したりするのには無理があり、諦めたのか蓋はカチッという音をたてて閉められていた。
前置きが長くなったが本題はここから。さて、蓋(この場合ノートパソコンの液晶の部分のことです、念のため)は閉められた。しかし、慌てる彼女は別の部分を開けてしまっていた。CD-ROMドライブである。慌てて荷物とノートパソコンをまとめている過程で、本体に標準装備のCD-ROMドライブのEJECTボタンが何かにぶつかって押されてしまったようだ。中途半端に開くCDトレイ。中には、こんなことになるとは知らず(何かはわからなかったが)CD-ROMが入っている。しかし慌てる彼女は気づかず、はみ出た状態のまま電車を降りようとしている。
この写真は実際の現場のものではなく、再現用のモデルさんを撮影したものです。
パソコンもVAIOじゃないし。
しかも降車駅では乗り換えをするようで、はたまた運悪く乗り継ぎがギリギリらしく、CDがはみ出たノートを小脇にかかえて走っちゃうもんだから、CDが出たり入ったりでもう大変!
見てるこっちは「あぁ壊れる壊れる」と気が気じゃない。WARNINGを超え、DANGEROU〜S!!
例えば、ブラの肩ひもがズレて露見していた(そうはいわないが)としよう。そこで「お嬢さん、下着はみ出てますよ」と言って、ポッと頬を赤らめて走り去る、なんてな姿に男はいつの時代もときめいたりするものだ。しかし20世紀も終わろうとしている今、「見せていい下着」なんてものがあったりするし、一昔前で言えばどう見ても下着として人目にはさらさないような服が街中で普通に着られたりしている。だからそれをさして「お嬢さん下着‥」なんて言おうものなら、爆笑されるか、下手すりゃセクハラだと訴えられかねない。
そんな何が羞恥かわからない、うれしいような悲しいような時代であって、一方「モバイル」という言葉がもはや日常語として扱われつつあるこの時代に於いても、ノートパソコンからCD-ROMがピョロリとはみ出ているのは恥ずかしいと思う。私がコンピュータ関連技術者であるからなおさらそう思うのかもしれないが、それを差し引いてもやっぱり恥ずかしいよこりゃ。恥ずかしいし危ない。電子部品の密集地帯・小台湾と化しているノートパソコンの、CD-ROMドライブ部分に妙な力を加えたことにより、ドライブだけ破損する可能性は低いことは想像に難くない。周辺の部品も破損、費用・時間共に多大な影響が出ることは間違いないであろう。
慌ててCDはみ出しちゃった、愉快〜な彼女のVAIOがその後どうなったか、私は一緒に降りた訳ではないのでわからない。ただただ無事であることを祈るのみである。
CDトレイが半開きなノートを小脇にかかえる女性の姿から、「ズレた肩ひも」「恥じる乙女」「爆笑するヤマンバギャル」「『頭隠して尻隠さず』という諺」「壊滅するノートバソコンの内部」‥そんなものが次から次へと頭の中を駆け巡り、さながらメタルブラックのラスボス〜EDのような状態で、揚げ句全裸で体育座り(わかる人だけわかって)。そんな、ホンの昼メシ前だった。と、うまく峰で締められたところでこの項了。
【追記】